Q.抗ヒスタミン薬と抗コリン薬(または抗コリン作用)に眠気の副作用があるのはなぜ?

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抗ヒスタミン作用と抗コリン作用の違い

登録販売者試験では、抗ヒスタミン作用と抗コリン作用はセットで出題されることが多く、これら2つの作用を混同してしまう方が多い印象があります。知識がごちゃごちゃにならないように、まずは、抗ヒスタミン作用と抗コリン作用の違いについて復習しましょう。
 
まず、ヒスタミンとアセチルコリンは全く別の物質であるということを認識しましょう。以下に、各作用を記載します。 
 
抗ヒスタミン作用

生理活性物質(刺激伝達物質と呼ばれることもある)のヒスタミンとヒスタミン受容体との関係によって引き起こされる作用。

 
 
抗コリン作用

神経伝達物質のアセチルコリンとアセチルコリン受容体との関係によって引き起こされる作用。

 
抗ヒスタミン作用と抗コリン作用を混同してしまう生徒が多いのですが、それは、抗ヒスタミン成分の中には、抗ヒスタミン作用だけでなく、抗コリン作用を持つものがあるからです。
 
なぜ、抗ヒスタミン剤が抗コリン作用を持つのか?については、以下の記事に詳しく書いてあります。ご参照ください。
 
 

抗ヒスタミン薬の眠気の副作用

こちらは、手引きに載っていますので、必ず覚えましょう。
 
生体内情報伝達物質であるヒスタミンは、脳の下部にある睡眠・覚醒に関与する部位で神 経細胞の刺激を介して、覚醒の維持や調節を行う働きを担っている。脳内におけるヒスタミン刺激が低下すると、眠気を促す。
試験問題作成に関する手引き
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/sikentebiki_4.pdf

 

 
つまり、ヒスタミンは脳の「覚醒」に関わっているため、抗ヒスタミン薬の使用により、ヒスタミンの働きが抑えられ、副作用として眠気が出ることがあります。
 
 
 
ポイント
① 脳内のヒスタミンの働き:覚醒
② ①の抑制:眠気

すなわち、②を引き起こすのが抗ヒスタミン薬です。

抗コリン薬の眠気の副作用

そして、抗コリン薬の眠気の副作用についてですが、こちらは手引きには詳しく載っていないので、順を追って説明していきます。
 
質問者さんは以下のように考えたとのことです。
抗コリン薬の作用機序として、アセチルコリンの働きが抑制される
→副交感神経が抑制される
→相対的に交感神経が優位になる
と考えた時に、 抗コリン薬の眠気の副作用が結びつかない…
 

抗コリン薬の眠気の副作用を理解するために、まずは、中枢神経系と末梢神経系の違いを頭に入れる必要があります。自律神経系は末梢神経系に分類されます。

 引用:㈱東京マキア テキスト https://tmaquilla.theshop.jp/items/28319733
 
※中枢神経は「中心となる神経」、すなわち脳・脊髄のことです。末梢神経は中枢神経から体の末端まで枝のように伸びている神経のことを言います。漢字で覚えましょう。
 
登録販売者試験の範囲では、アセチルコリンは、末梢神経のうち、副交感神経の神経伝達物質として学びます。
ですが、 アセチルコリンは中枢神経系の伝達物質でもあります。つまり、ざっくり言うと、体だけではなく脳でも働くということですね。
 
では、脳内でアセチルコリンはどのような働きに関わっているのでしょうか?
答えは、 覚醒、集中力、認知能力などです。
 
脳内で抗コリン薬が作用した場合、脳内のアセチルコリンの働きが抑制され、覚醒の反対の現象、すなわち眠気の副作用が出ると考えられています。
 
 
 
ポイント
① 脳内のアセチルコリンの働き:覚醒
② ①の抑制:眠気
 
すなわち、②を引き起こすのが抗コリン薬です。
抗ヒスタミン薬と似ていますね。

まとめ

このご質問を解説するにあたり、抗コリン作用と抗ヒスタミン作用の違いと、中枢神経と末梢神経の違い、この2つの観点からお話ししました。
 
少し難しい話になりましたが、今回の質問はとても良いですね。深く勉強すればするほど、登録販売者試験の勉強の知識だけでは理解できない部分が出てくると思いますので、どんどん質問してください。
 
ちなみに、酔い止めに使われる抗コリン薬の場合、中枢への作用と末梢への作用が両方とも出てきます。(中枢への作用については、あいまいで分かりにくい表現ですね…)
 
●中枢への作用:自律神経系の混乱を軽減させる
●末梢への作用:消化管の緊張を低下させる作用を示す
 
 
以上になります。
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