質問の意図
試験問題作成に関する手引きには、マオウについて、以下のような記載があります。
マオウについては、気管支拡張のほか、発汗促進、利尿等の作用も期待される。
引用:試験問題作成に関する手引き
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/sikentebiki_4.pdf
マオウには、エフェドリンやプソイドエフェドリンなどのアドレナリン作動成分が複数含まれており、気管支拡張作用や、副作用としての排尿困難についてはご存知の方が多いと思います。
ですが、手引きには「利尿作用がある」と記載があるので、「利尿作用」と「排尿困難の副作用」という、一見相反する作用を同時に持つのはなぜですか?という趣旨のご質問になります。
「利尿」と「排尿困難」の作用
結論から申し上げますと、「利尿」と「排尿困難」の作用は別々の臓器で生じます。
●排尿困難の副作用…膀胱にある排尿筋がゆるんで尿が出にくくなることで起こる
つまり、これらは別々の作用なので、同時に生じることがあります。
マオウの排尿困難の副作用について
さて、交感神経系を介した膀胱への作用と、「排尿困難」の副作用についても復習しておきましょう。
まず、アドレナリン作動成分には、膀胱の尿をためる(膀胱をゆるめる)方向に持っていく性質があります。
もう少し専門的な言葉ですと、「膀胱平滑筋(=排尿筋)を弛緩」となります。
つまり、マオウの作用として、上の図で言うピンク色のペンで示したような作用があるということになります。
マオウの利尿作用について
では、今回問題となっている利尿作用について考えてみましょう。マオウの利尿作用の仕組みとしては、次のようなことが考えられます。
●マオウに含まれているプソイドエフェドリンに利尿作用があるため
●マオウに含まれるアドレナリン作動成分が、腎臓の血管を拡張して利尿作用を引き起こすため
●東洋医学的には帰経(どの臓器に影響するかを示したもの)が肺・膀胱であるため
2つめの記述についてですが、アドレナリン作動成分には、なんとなく「血管収縮」のイメージがあると思います。なので「腎臓の血管拡張」という言葉に疑問を持った方がいるかもしれません。こちらについては登録販売者試験の内容を大きく超えた知識となり、詳しい説明は割愛しますが、「鼻の血管は収縮」「腎臓の血管は拡張」という結果のみ、「ふ~ん」という気持ちで見ていただければOKです。
【参考資料】
東京農業大学 御影雅幸 漢方生薬の国産化に向けて
https://www.nodai.ac.jp/application/files/5915/2299/9228/agri-topics-pdf01.pdf
PMDA ディレグラ添付文書
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/171911_4490100F1021_2_03
腎臓におけるβ2 アドレナリン交感神経受容体の役割
中村 明夫ほか 日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)124,427~434(2004)https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/124/6/124_6_427/_pdf
まとめ
マオウの「利尿作用」と「排尿困難」の2つの作用は、どちらも尿関係の作用であり、一見矛盾しているように見えます。しかし、別々の作用として同時に起こり得るというふうに考えてくださいね。