Q.抗ヒスタミン作用と抗コリン作用は、イコールですか?

A.抗ヒスタミン作用と抗コリン作用は、イコールではありません。

●抗ヒスタミン作用:生理活性物質(刺激物質と呼ばれることもある)のヒスタミンとヒスタミン受容体との関係によって引き起こされる作用
 
●抗コリン作用:神経伝達物質のアセチルコリンとアセチルコリン受容体との関係によって引き起こされる作用

このように、別の受容体が関連しています。登録販売者試験では、抗コリン薬は主に自律神経系(副交感神経系)の薬として出題されますし、抗ヒスタミン剤は主にアレルギー関連の薬として出題されます。では、なぜこのような疑問がでるのか、皆さんを混乱させる理由は、以下のひとことですよね。

「抗ヒスタミン剤は抗コリン作用を持つものがある。」

では、説明をしていきます。

受容体とは?

ここで、念のため、受容体についてお話ししておきます。受容体は、「鍵穴」のようなものだと考えてください。ここで「鍵」となるのは、ヒスタミンやアセチルコリンなどの生体内物質や、抗ヒスタミン剤や抗コリン薬などの薬です。

ヒスタミンやアセチルコリンなどの「鍵」が「鍵穴」にささると、扉がオープンします(人体の場合、体に「何らかの影響」をもたらします)。また、抗ヒスタミン剤や抗コリン薬などの「鍵」が「鍵穴」にささった場合は、ヒスタミンやアセチルコリンが「鍵穴」にささることができなくなり、扉をオープンできなくなります(体に「何らかの影響」をもたらすことができなくなります)。もう少し分かりやすくするために、例を書きます。

<例>

●ヒスタミンが「鍵」となって「鍵穴」に入る場合

かゆみや鼻水など、全身に炎症が起きます。

●抗ヒスタミン剤が「鍵」となって「鍵穴」に入る場合

抗ヒスタミン剤は、ヒスタミンとは「別のもの」ですが、ヒスタミン受容体にくっつくことができます。ほんものの鍵の場合も、別の鍵だと、鍵穴に刺すことはできても扉を開けることができないという現象がありますよね。それを想像してください。

抗ヒスタミン剤が先にヒスタミンのための「鍵穴」に入っているので、ヒスタミンが「鍵穴」に入れなくなります。すると、全身性の炎症が起きなくなります。

ここで重要なことは、ヒスタミンはヒスタミン受容体の鍵穴に、アセチルコリンはアセチルコリン受容体の鍵穴に…というように、「鍵穴(受容体)」の形はすべて同じではなく、別々の形をしているということです。では、なぜ抗ヒスタミン剤は抗コリン作用を持つのでしょう?

なぜ抗ヒスタミン剤は抗コリン作用を持つのか?

実は、ヒスタミン受容体はアセチルコリン受容体に似ているので、抗ヒスタミン剤の多く(特に第一世代の抗ヒスタミン剤)は抗コリン作用を持ちます

つまり、これら2つの「鍵穴」が似ているので、抗ヒスタミン剤という「鍵」が間違えてアセチルコリンの「鍵穴」にもささってしまい、扉をオープンしてしまうということです。ですので、抗ヒスタミン作用=抗コリン作用ではありませんが、セットで覚えておくことは良いことです。

ちなみに、第二世代の抗ヒスタミン剤(新しい抗ヒスタミン剤)の多くは改良され、抗コリン作用が少なくなっています。

第一世代、第二世代の抗ヒスタミン剤の区別は、試験では不要な知識ですが、登録販売者になってからは知っておいた方が良い知識です。第一世代は古い抗ヒスタミン剤で、抗コリン作用や眠気などの副作用が出やすいですが、第二世代の抗ヒスタミン剤は、副作用が軽減されています。

(村松早織)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加