質問の意図
手引きの含嗽薬(うがい薬)のヨウ素の項目には、以下のように記述があります。
ヨウ素は、レモン汁やお茶などに含まれるビタミンC等の成分と反応すると脱色を生じて殺菌作用が失われるため、ヨウ素系殺菌消毒成分が配合された含嗽薬では、そうした食品を摂取した直後の使用や混合は避けることが望ましい。
一方で、 ヨウ素系殺菌消毒成分の項目には、
ヨウ素の殺菌力はアルカリ性になると低下するため、石鹸等と併用する場 合には、石鹸分をよく洗い落としてから使用するべきである。
引用:試験問題作成に関する手引き
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/sikentebiki_4.pdf
この2つの記述が矛盾しているように思えて、うまく理解できないということでご質問をいただきました。
質問者は以下のような流れで考えたとのことです。
ヨウ素はビタミンCにより効果が減弱する
→ビタミンCは酸性なので、ヨウ素は酸性で効果減弱すると考えられる
→なのにアルカリで殺菌力低下というのは、矛盾しているように思える
おもしろいですね。
結論から言うと、 「ビタミンCとヨウ素」、そして、「酸性・アルカリ性におけるヨウ素」の反応は、全く別の話になるので、分けて考える必要があります。
ヨウ素とビタミンCについて
ビタミンCについての記述は、「口腔咽喉薬、うがい薬(含嗽薬)」、つまり、のどに使う薬の項目でで出題されます。
ヨウ素とビタミンCとの反応は、 酸化・還元反応という反応で、簡単にいうと、電子をやり取りする反応になります。
ちなみに、脱色反応について実験した動画がありますので、ぜひご覧ください。
こちらの動画を見ていただくと、真黒なヨウ素液が透明に変わっていくのが分かると思います。不思議ですよね。
ヨウ素とアルカリ性成分について
一方、酸性・アルカリ性の問題は、皮膚用薬(殺菌消毒成分)の項目で出題されます。
ヨウ素とアルカリの反応は、 酸・塩基反応で、中和反応も酸・塩基反応の一つです。この反応は、プロトン(H+)のやり取りとする定義もあれば、電子対のやり取りとする定義もあります。
例として、以下の反応式を書きます。この場合、ヨウ素(酸)と水酸化ナトリウム(塩基またはアルカリ)が中和反応を起こし、水が生成します。
ヨウ素とアルカリの関係についての問題でよく出てくる記述は、以下になります。
この記述は正しいです。「アルカリ性」の部分が「酸性」になっているひっかけ問題がありますので、気を付けましょう。
まとめ
以上のように、これらの「ビタミンCとヨウ素」、そして、「酸性・アルカリ性におけるヨウ素」の2つの反応は、別の反応になりますので、切り離して考える必要があります。
登録販売者試験では、化学を学ぶ機会がありませんので、なかなか理解するのが難しいと思います。手引きにはこのような記述がかなりあっさりと書かれていますので、イマイチ理解しにくい部分が多いですよね。
今回のことについて、最も抑えるべきことは、
1.ビタミンC
2.アルカリ性成分
1の場合も2の場合も、ヨウ素系製剤と一緒に使うと作用が減弱するということです。増強ではありませんのでご注意ください。