こちらは、登録販売者試験の第四章についての記事になります。
ある「効能効果」の表現が、 化粧品か?医薬部外品か?を選ぶ問題が出題されることがあります。苦戦する受験生も多く、よく質問がきます。
ドラッグストアで働いていれば当然医薬品以外の商品についても聞かれますので、化粧品や医薬部外品について勉強しなくてはならないのは理解されていると思いますが、なぜそもそもこういった問題が出るのでしょうか?
出題意図
ドラッグストアなどで働くと、お客さまに商品説明をする機会がたくさんありますね。
その際に、スタッフが接客で発する言葉や、スタッフが作成するポップなども、その商品の広告の一部になります。
例えば、スタッフがお客さまに化粧品をおすすめする際に、医薬部外品的な効能効果があると言って販売するとします(医薬品のような効能効果を言ってしまうのはもっとNGですが…。)。
そして、お客さまが使用後に、「そんな効能はなかった」と主張されたとしたら、最悪の場合、行政から店舗に指導が入る可能性もあります。そういった誤解が生じないよう、しっかりとこれらの商品の効能効果の範囲を区別した上で、その範囲を守って接客をする必要があります。
まず、効能効果の強さをざっくりと押さえておきましょう。簡単に言うと、以下のようになります。
医薬部外品は、医薬品と化粧品の中間のような存在です。
余談になりますが、医薬部外品は日本独特の分類です。
私が知る限り、主要国には医薬部外品カテゴリーはありません。なので、お客様に英訳する時も少し困ります。ちなみに、 日焼け止めや制汗剤は、 アメリカでは医薬品です。
このように、正直あいまいさの残るカテゴリーであることと、化粧品とかぶっている効能効果もたくさんありますので、一般の方も含め、皆さんが理解しにくいのは当然かと思います。
これを踏まえて説明していきます。
化粧品と医薬部外品の効能効果を把握するコツ
さて、コツと言えるかは分かりませんが、ざっくり言うと、以下の5点を押さえるといくらか理解しやすくなります。
- 症状名のような表現が含まれるもの:医薬部外品
- 使用した部分の機能や構造を変えるもの:医薬部外品
- コンプレックスになりうる言葉が入る表現:医薬部外品
- キレイになるイメージを表す言葉が入るもの:化粧品
- 語尾が治療的表現であるもの:医薬品
以下に例を挙げます。
1.症状のような単語が含まれる表現:医薬部外品
ここで気を付けたいことは、 かみそり負けは細かい傷のことですので、症状に近い表現になります。
ポイント
●かみそり負け:医薬部外品
●ひげそり後の肌を整える:化粧品
以下の写真はどちらも「医薬部外品」になります。
●サクセスのシェービングジェル
●ユースキン
2.使った部分の機能や構造を変えるもの:医薬部外品
これらの単語が入っている場合、医薬部外品になります。
わかりやすく言うと、化粧品は使ったところをコーティングする(覆う)だけです。医薬部外品は、使ったところをコーティングするだけでなく、そこの部分の機能や構造を変えます。
ポイント
●化粧品:使ったところをコーティングする(だけ)。
●医薬部外品:使ったところの機能や構造を変える。
※美白表現について
●メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ:医薬部外品はOK
●日焼けによるシミ・そばかすを防ぐ:医薬部外品は、該当成分が入っていればOK、化粧品は「日焼け止め」のみOK(日焼け止めは単なる「コーティング」のため。)
3.コンプレックスになりうる言葉が入る表現:医薬部外品
これらの単語が入っている場合、医薬部外品になります。
4.キレイになるイメージを表す言葉が入るもの:化粧品
感覚的であいまいなイメージを持つ言葉が入るものは、化粧品の効能・効果で多い特徴です。
5.動詞が治療表現:医薬品
※「防ぐ」は化粧品でも一部使われている表現である。
見ておきたい資料
厚生労働省作成の試験問題作成の手引きに、以下の別表類が載っています。これらの表はざっと確認しておきましょう。
※PDFファイル文書内でなにかを検索するときは、「Ctrl+F」を押して、検索窓に短い語句を入れて検索してください。長い語句を入れると反応がないことがほとんどです。
4-1.医薬部外品の効能効果の範囲
4-2.特定保健用食品:これまでに認められている主な特定の保健の用途
4-3.栄養機能食品:栄養機能表示と注意喚起表示
4-4.化粧品の効能効果の範囲
過去問を攻略するために、上記の別表を暗記するように!と言うのは簡単ですが、もう少しわかりやすい考え方で説明します。
過去問
以下の効能効果は過去問から抜粋しています。
化粧品なのか、医薬部外品なのか、はたまた医薬品的表現なのか、当ててみてください。
髪の毛
- くせ毛、ちぢれ毛又はウェーブ毛髪をのばし、保つ
- 毛髪にウェーブをもたせ、保つ
- 毛髪を脱色する
- フケ、カユミがとれる
- 毛髪にはり、こしを与える
- 毛髪のつやを保つ
- 頭皮、毛髪をすこやかに保つ
- 裂毛、切毛、枝毛を防ぐ
皮膚
- 皮膚の清浄、殺菌、消毒
- 日やけを防ぐ
- 日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ
- 肌荒れを防ぐ
- 皮膚の乾燥を防ぐ
- 皮膚にうるおいを与える
- 皮膚を保護する
- 皮膚を修復する
- カミソリまけを防ぐ
その他
- わきが(腋臭)、皮膚汗臭、制汗
- あせもを防ぐ(打粉)
- うおのめを改善する
- カミソリまけを防ぐ
- ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)
- 口臭を防ぐ(歯みがき類)
- 口唇の荒れを治す
過去問解説
それでは過去問を解説していきます。
効能効果は、医薬部外品>化粧品 なので、ほとんどの医薬部外品で化粧品表現が可能です。それについては併記していないので、あらかじめご了承ください。
髪の毛
正解
- くせ毛、ちぢれ毛又はウェーブ毛髪をのばし、保つ:医薬部外品
- 毛髪にウェーブをもたせ、保つ:医薬部外品
- 毛髪を脱色する:医薬部外品
- フケ、カユミがとれる:化粧品
- 毛髪にはり、こしを与える:化粧品
- 毛髪のつやを保つ:化粧品
- 頭皮、毛髪をすこやかに保つ:化粧品
- 裂毛、切毛、枝毛を防ぐ:化粧品
解説
a の「ちぢれ毛」はコンプレックスになりうるので、医薬部外品であると覚えます。また、2.機能や構造を変えるにもあてはまります。なぜなら、縮毛を直す=髪の内部の結合を一度ほどいて結合し直すという、たんぱく変性を起こしているからです。
また、b のような「髪の毛をウエーブにする」商品も、上記と同じ理由で医薬部外品になります。
a,b の商品は、誤解しないでほしいのですが、朝セットするために使うスタイリング剤などではなく、 ヘアカラーのような液剤のことを指しています。スタイリング剤は、ほとんどのものが、単なる「トリートメント剤」です。
c の「脱色」も、2.機能や構造を変えるにあてはまるので、医薬部外品になります。染色剤は複雑ですが、以下のようになります。
ポイント
●ヘアマニキュア:髪の表面をカラーコーティングする:化粧品
●ヘアカラー、脱色剤:髪の内部をこじ開けてメラニン色素を抜いている:医薬部外品
d の「フケ、カユミがとれる」ですが、フケは頭皮の「垢」です。ふけの出る原因は様々ですが、よくある原因は、乾燥や皮脂量、洗浄不足です。ですので化粧品の範囲になります。
また、カユミは一見、医薬品的表現ですが、カユミにも種類があり、単に洗浄していないなど、疾病以外の痒みの場合もありますよね。その場合は化粧品になります。
もちろん、アレルギーなどが原因のフケ・カユミは、治療が必要な場合がありますが、その場合の商品は医薬品カテゴリーになります。
e,f,g の「はり、こし、つや、すこやか」は、4.キレイになるイメージを表す言葉が入る に該当するので化粧品です。
h の「裂毛、切毛、枝毛を防ぐ」も、髪の毛の保湿がメインになりますので、化粧品です。化粧品は「保湿」がメインの役割だということを覚えましょう。
肌
- 皮膚の清浄、殺菌、消毒:医薬部外品
- 日やけを防ぐ:化粧品
- 日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ:化粧品
- 肌荒れを防ぐ:化粧品
- 皮膚の乾燥を防ぐ:化粧品
- 皮膚にうるおいを与える:化粧品
- 皮膚を保護する:化粧品
- 皮膚を修復する:医薬品
- カミソリまけを防ぐ:医薬部外品
a は「殺菌、消毒」が 「傷やけが」などを思い起こさせるので、1. 症状名のような単語にあてはまります。よって医薬部外品です。ですが、実際は、手指消毒剤のような創傷面に使わない物も医薬部外品となっています。
b,c どちらも化粧品でOKの表現です。
b の「日焼けを防ぐ」商品は、例えば日焼け止めがありますが、皮膚に塗布することで日焼けを防いでいるので、皮膚の機能自体は変えていません。なのでその場合は化粧品です。
ただし、c の「日焼けによるシミ・そばかすを防ぐ」に関しては少し複雑で、化粧品の場合、どのような商材かが限られています。
●医薬部外品
「日やけによるしみ・そばかすを防ぐ」効能効果を承認された成分が配合されている化粧品と、メーキャップ品(ファンデーションなど)はOK
●化粧品
日焼け止めと、メーキャップ品はOK
つまり、化粧品なのに、日焼け止め以外の商材(例えば化粧水など)でこの表現を謳ってしまうと違法になります。ですので、皆さんの中で、基礎化粧品で「美白」を大々的に謳っている商品を見たことがあるとしたら…その商品は違法である可能性が高いです。
d の「肌荒れ」も微妙な表現ですが、化粧品もOKの表現です。これは覚えてしまってください。
e,f の「乾燥・うるおい」ですが、どの基礎化粧品であろうと、メインの役割は保湿ですので、これは完全に化粧品の効能範囲内になります。
g ですが、「保護」という表現は特に肌の機能や構造を変えているわけでもなく、治療的表現でもないので、化粧品です。
h の「修復する」は、5. 語尾が治療表現にあてはまりますので、医薬品です。「修復」の意味は、「傷んだ箇所を直して、元のようにすること」ですので、傷の治療を連想させますね。
i の「かみそり負け」は、冒頭で話しました。
かみそり負けは細かい傷のことで、1. 症状のような単語になるので、医薬部外品です。化粧品にも似たような表現があるので気を付けましょう。
- かみそり負け:医薬部外品
- ひげそり後の肌を整える:化粧品
その他
- わきが(腋臭)、皮膚汗臭、制汗:医薬部外品
- あせもを防ぐ(打粉):化粧品
- うおのめを改善する:医薬部外品
- ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類):化粧品
- 口臭を防ぐ(歯みがき類) :化粧品
- 口唇の荒れを治す:医薬品
a の「わきが」など、におい系は、3. コンプレックスになりうる言葉が入る表現に当てはまるので、医薬部外品です。
意外なことに、においを抑える、汗を抑える等の表現は、化粧品では認められていません。
医薬部外品には、体臭の防止を目的とする外用剤として、腋臭防止剤というカテゴリーがあります。ただし、「芳香を与える」は、化粧品でもOKの表現となります。
以前、化粧品なのに「制汗効果がある」と謳ってしまい、商品回収となった化粧品製造販売業者さんもいます。
●8×4
ポイント
においを抑える、汗を抑える:医薬部外品
※化粧品はNG
b の「あせも」は、医薬部外品が得意とする効能効果ですが、実は、「打粉(うちこ)」であれば、化粧品もOKとなります。打粉とは、汗取りのために皮膚につける粉で、てんか粉とも言います。いわゆるベビーパウダーですね。ベビーパウダーなどは肌を覆っているだけなので、化粧品でOKなのです。
医薬部外品の場合は、てんか粉に加えて、あせもを緩和する外用剤も含まれます。
ポイント
●あせも、ただれの緩和:医薬部外品
●あせもを防ぐ(打粉):化粧品
c の「うおのめ」は、1. 症状名のような単語が含まれる表現ですので、医薬部外品です。
d,e の「虫歯、口臭を防ぐ」ですが、歯磨き粉関係は、化粧品であっても割と踏み込んだ表現が可能です。他に、以下も化粧品です。
- 歯を白くする(ブラッシングを行う歯磨き粉)
- 歯垢除去(ブラッシングを行う歯磨き粉)
- 歯のやにを取る(ブラッシングを行う歯磨き粉)
- 歯石の沈着を防ぐ(ブラッシングを行う歯磨き粉)
ただし、○○炎など、症状が来る場合は、医薬部外品になります。
ポイント
歯周炎、歯肉炎の予防、歯がしみるのを防ぐ:医薬部外品
※化粧品はNG
さて、最後。f の「口唇の荒れを治す」ですが、「治す」が医薬品の表現になります。
ただし、「口唇の荒れを防ぐ」であれば、化粧品もOKです。
以上となります。