胃腸薬がほしいと言われたら…

胃薬の接客は、登録販売者の中でも苦手な方が多い分野です。日本の市販の胃薬は総合胃腸薬が多いので、ひとつのお薬に何種類も成分が入っていて、何を中心に考えるべきなのか迷いやすいようです。でも実は、ポイントさえつかめば簡単ですよ。

まずは、薬の成分を整理しましょう。

薬の成分の分類

まず成分を5つに分類します。制酸成分、胃粘膜保護・修復成分、健胃薬、消化剤、その他です。市販の胃腸薬は、この5分類のいずれかの組み合わせでできています。名前は全部覚える必要はなく、ネーミングにそれぞれ特徴があるのでそれだけ掴んでおきましょう。ただ、胃粘膜保護剤だけは統一感がありませんので各解説をしていきます。

制酸成分

合成ヒドロタルサイト、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム

名前の特徴

いずれも金属名が入っている無機塩類と呼ばれる成分です。

酸とアルカリが反応すると、「中和」されますね。制酸剤の場合は、胃酸と無機塩類が反応して中和されるわけです。

合成ヒドロタルサイト

ハイドロタルク石と呼ばれる、アルミニウムとマグネシウムの化合物

メタケイ酸アルミン酸マグネシウム

名前の通り、アルミニウムとマグネシウムの化合物

制酸剤とH2ブロッカーの違い

ガスターなどのH2ブロッカーやピレンゼピンなどのM1ブロッカーは、胃酸を抑える効能があり、制酸剤と混同されがちな成分です。これらのお薬と制酸剤はたしかにどちらも酸を押さえますが、確固たる違いがあります。簡単に言うと、

・制酸剤:今ある胃酸を中和して抑える役割がある

・ガスターやピレンゼピン:これから出るであろう胃酸を抑える役割がある

目的は同じですが、違う道筋で胃酸を抑えるということですね。

胃粘膜保護・修復成分

アズレンスルホン酸ナトリウム、アルジオキサ、スクラルファート、セトラキサート塩酸塩、テプレノン、銅クロロフィリン酸カリウム、メチルメチオニンスルホニウムクロライド

名前の特徴

名前に一番統一感のない成分たちが胃粘膜保護剤になります。ただ、それぞれその成分の特徴がありますので、その生成法などと関連付けて覚えておけば忘れにくいです。まず、抗炎症成分と胃粘膜保護剤には深い関係があるのでそれを確認していきましょう。

アズレンスルホン酸ナトリウム

アズレンは言わずと知れた、のどの炎症などにも使われる抗炎症成分です。

アルジオキサ

アラントインと水酸化アルミニウムの複合体。アラントインは、組織修復作用と抗炎症作用があります。胃の中でアラントインは組織修復を、アルミニウムは胃酸中和をします。アルジオキサのネーミングは恐らく、「アラントイン」と「ジヒドロキシ」アルミニウムの略だと推測されます。

セトラキサート塩酸塩

代謝されてトラネキサム酸になります。トラネキサム酸は止血と粘膜の抗炎症作用があります。セトラキサートのトラはトラネキサム酸と推測されます。


このように、抗炎症成分が胃粘膜保護薬となって胃を保護し炎症を抑える役割を担うパターンが多いです。そのほかの成分は個々に覚えるしかないのですが、解説していきます。

スクラルファート

スクロース(ショ糖)とサルフェート(硫酸アルミニウム)の複合体で、名前もそのまま合体した形になっています。胃の傷ついた部分のタンパク質に付着して被膜を形成します。

テプレノン

別名、テトラプレニルアセトンと言います。元々植物から発見された成分を改良して作られた成分です。胃粘液を増やし、保護・修復をします。

銅クロロフィリン酸カリウム

クロロフィルは葉緑素のことです。胃粘膜保護作用や肉芽形成促進作用があり、傷ついた胃粘膜を修復・保護します。消臭効果もあります。

健胃薬

オウバク、オウレン、センブリ、ゲンチアナ、ケイヒ、ショウキョウ、チョウジ、ソウジュツ、ウイキョウ

名前の特徴

胃薬に生薬名が入っていたら、ほぼ芳香・苦味健胃薬だと思ってよいでしょう。

消化薬

ジアスターゼ、タカジアスターゼ、ビオジアスターゼ、リパーゼ、プロザイム、ウルソデキシコール

名前の特徴

〇〇―ゼ、〇〇ザイムと付いたら、消化酵素剤です。酵素のことはエンザイムと言いますね。コエンザイムQ10も補酵素と言われるものの一種です。

・ウルソデキシコール酸:利胆作用(胆汁分泌を促す作用)で消化を助ける成分。コールとはギリシャ語で胆汁のことを表します。例えば、コレステロールは胆汁酸の原料となりますが、頭についている「コレ」も胆を表しています。

その他の成分

胃腸鎮痛鎮痙薬

スコポラミン臭化水素酸塩水和物、ロートエキス

抗コリン薬です。副交感神経刺激を抑えることにより、胃の過剰な動きを抑えます。恋で学ぶ!抗コリン薬に詳細が載っています。

局所麻酔成分

アミノ安息香酸エチル、オキセサゼイン

胃粘膜を直接麻酔して、嘔吐刺激をやわらげます。

胃液分泌抑制剤

ピレンゼピン塩酸塩

M1ブロッカーと呼ばれる成分です。こちらも抗コリン薬の一種になりますが、上に出てきた抗コリン薬とは少し異なります。恋で学ぶ!抗コリン薬に詳細が載っていますので、そちらをご確認下さい。

胃薬接客のコツ

成分を抑えたところで、実際の接客を確認していきましょう。もちろん人によって色々な切り口があると思いますが、ここでは初心者向けに全体像を把握するということが第一の目的になります。何年も接客している方にとっては分類が乱暴だと思われるかと思いますが、こちらの意図をご理解ください。

まず、第一にやってほしいことはこちらです。

お客様の症状を聞いて、胃の機能亢進と胃の機能低下のどちらかに振り分ける。

これらのことばを以下のように定義づけます。ここを押さえておくととても接客しやすくなるので、ぜひしっかり頭に入れてください。ここで振り分けられない特殊な症状に対しては、さきほどの成分分類のうち、多くはその他の成分で対処します。

胃の機能亢進

胃に負担がかかって胃が過剰に働きすぎている状態。つまり、もともと胃の健康状態は悪くないけれど、飲み過ぎ・食べ過ぎにより胃液のバランスが崩れている。過剰な胃酸分泌が主な原因と考えらる症状。

・主な症状:胸焼け、胃のむかつき、胃酸が原因と考えられる吐き気、空腹時の胃の痛みなど。

・治療薬:制酸剤によって胃酸を中和する。胃粘膜保護薬で胃酸から胃を保護する。

胃の機能低下

胃の機能が低下して弱っている状態。胃のはたらき自体を正常に戻す必要がある。

・主な症状:食べた後の胃もたれや胃痛、消化不良、食欲不振など。

・治療薬:苦味芳香健胃薬で胃酸の分泌を促し、低下した胃の働きを元に戻す。消化剤によって胃内容物の消化を促進する。

1症状1商品作戦を実行してみよう!

1症状1商品作戦とは、「この症状にはこの商品」というように、あらかじめ商品をピックアップしておくということです。

私がピックアップする商品は一例になりますが、参考にしてください。

胃の機能亢進による症状を緩和する薬

ストマクール(制酸剤+胃粘膜保護剤)

制酸剤で過剰な胃酸を抑えつつ、胃粘膜保護剤で胃を保護するお薬です。顆粒ですが、スッキリとした飲み心地で苦味もほとんどありません。〇〇クールという販売名は、胃酸をスッキリさせる系のお薬に多いです。

(成分)

制酸剤:合成ヒドロタルサイト、水酸化マグネシウム

胃粘膜保護薬:アズレンスルホン酸ナトリウム水和物、アルジオキサ、L-グルタミン

【第2類医薬品】ストマクールA細粒(18包)

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※ストマクールに似た組成のお薬では、パンシロンAZ、パンシロンクールNOW、サクロンQなどがあります。

太田胃散チュアブルNEO(制酸剤)

ほぼ制酸剤のみのお薬です。あまり色々な成分が入っていないシンプルなものがお好きな方にはおすすめです。消泡剤が一緒に入っているので、他に膨満感やおなかにガスがたまっているような症状のある方に特におすすめです。

(成分)

制酸剤:水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム

消泡剤:ジメチルポリシロキサン

【第3類医薬品】太田胃散 チュアブルNEO 28錠【楽天24】[太田胃散 胃腸薬/胃痛・胸やけ(制酸・胃粘膜修復)/水なしで飲めるタイプ]【trip3】【hl_mdc1216_otaisan】

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セルベール(胃粘膜保護薬)

胃粘膜保護薬と健胃薬のシンプルな処方です。ロキソニンと胃粘膜保護薬を一緒に処方されている方で、胃粘膜保護薬が切れててしまったときなどの緊急的な代替品としても安心して飲めるような成分配合です。販売名は、「セル(細胞)にベールする」でしょうか。

(成分)

胃粘膜保護剤:テプレノン

健胃薬:ソウジュツ乾燥エキス、コウボク乾燥エキス

【スイッチOTC】【第2類医薬品】エーザイ 新セルベール整胃錠 90錠

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胃の機能低下による症状を緩和する薬

ストマーゼ(消化剤+健胃薬)

消化剤と健胃薬中心のお薬で、糖、タンパク質、脂肪を消化する3種類の消化酵素剤が配合されています。胃の機能を補助するお薬です。〇〇ーゼは酵素のことでしたね。ストマーゼという販売名も分かりやすいです。

(成分)

消化剤:ビオヂアスターゼ2000、ニューラーゼ、リパーゼAP6、ウルソデオキシコール酸

健胃薬:ガジュツエキス、ケイヒ油、ハッカ油

制酸剤:メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、水酸化マグネシウム

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太田胃散A錠も、ストマ―ゼと似たような組成です。確認してみてください。

※ストマクールとストマーゼですが、両方ともゼリア新薬さんの薬です。胃薬としてのコンセプトが抜きんでて分かりやすいので、いつも登録販売者の方への説明に使わせていただいています。

その他の症状を緩和する薬

さしこみ痛、胃痙攣:ブスコパン

さしこみ痛とは、刃物で刺されたような痛みを言います。ブスコパンは医療用としては、下痢や胆石の痛みなど広く内臓の痛みに使われますが、市販薬のブスコパンの適応は胃痛・腹痛のみです。抗コリン薬ですので、むやみに服用できるお薬ではなく、使い方には注意が必要です。ブスコパンの作用機序については、恋愛で学ぶ!抗コリン薬をご覧ください。

(成分)ブチルスコポラミン臭化物

【スイッチOTC】【第2類医薬品】エスエス製薬 ブスコパンA 錠 20錠

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嘔吐、吐き気:サクロンQ

嘔吐や吐き気の原因には、感染性(ウイルスや細菌)のものと非感染性(ストレスや単なる食べ過ぎ・飲み過ぎ)のものがあります。サクロンQは胃粘膜への局所麻酔作用により、嘔吐刺激を抑える薬で、非感染性の嘔吐であれば服用できます。

感染性の嘔吐の場合は、薬で吐き気を止めてしまうと症状が悪化する可能性があるので服用できません。詳しくは、吐き気止めのノートをご覧下さい。

(成分)オキセサゼイン

【第2類医薬品】サクロンQ(セルフメディケーション税制対象)(12錠)【サクロン】

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ストレス性の胃痛:ガストール

ガストールは、抗コリン薬のピレンゼピンと、制酸剤が配合されたお薬です。

人は大きなストレスがかかると自律神経のはたらきが乱れて、アセチルコリンが過剰に放出されることがあります。アセチルコリンは胃の働きを促進する効果があるので、これにより胃酸が過剰に分泌します。

「抗コリン薬=アセチルコリンを抑える薬」ですね。ガストールは副交感神経刺激を抑える(アセチルコリンの放出を抑える)ことにより、胃の異常な活動を抑えます。

(成分)

抗コリン薬:ピレンゼピン塩酸塩水和物
制酸剤:メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム
消化剤:ビオヂアスターゼ2000

【第2類医薬品】ガストール錠(セルフメディケーション税制対象)(60錠)【ガストール】

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